大判例

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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)7163号 判決

原告

岡本つる

外二三名

原告ら訴訟代理人弁護士

高見沢昭治

田岡浩之

神山啓史

清水聡

茨木茂

美里直毅

遠山秀典

北野弘久

白井正明

角田由起子

末吉宜子

千葉肇

須網隆夫

安原幸彦

前田茂

小林譲二

小口克已

日置雅晴

齋藤雅弘

小寺貴夫

山本英司

羽倉佐知子

栄枝明典

小園江博之

阿部哲二

森田太三

土田庄一

小林政秀

房川樹芳

横山哲夫

米川長平

上柳敏郎

小島延夫

玉木一成

和田裕

小林明子

中村雅人

犀川千代子

小野寺昭夫

林浩二

鈴木敏夫

吉田栄士

溝口敬人

飯塚和夫

関島保雄

志田なや子

佐川京子

佐々木良博

村千鶴子

小林克信

蔵本怜子

平和元

井口克彦

木下淳博

杉本文男

亀井尚也

永井義人

曽田多賀

鬼束忠則

南惟孝

新津勇七

原純一郎

清水正英

山脇哲子

若松巌

榊原富士子

被告

大内融

外六名

主文

一  別紙認容債権一覧表の被告欄記載の各被告らは、同表の同被告欄に対応する原告欄記載の各原告らに対し、同表中同原告欄、同被告欄に対応する認容額欄記載の各金額及びこれに対する昭和六〇年七月一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

二  訴訟費用は、被告らの負担とする。

三  この判決は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

主文第一項同旨

第二事案の概要

一本件は、原告らが訴外鹿島商事株式会社(以下、「鹿島商事」という。)の「ゴルフクラブ会員証券商法」により生活資金を騙し取られた被害者であるとして、当時、右会社の取締役、監査役、営業担当従業員であった被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償を請求した事案である。

二原告らの請求原因

1  (当事者)

鹿島商事は、ゴルフ会員権の販売等を目的として昭和五九年八月一〇日設立された会社で、原告らは、鹿島商事の後記のいわゆる「ゴルフクラブ会員証券商法」により、後記のように生活資金を騙し取られた被害者であり、被告らのうち被告番号1の被告は昭和六〇年二月一日から同年三月一日まで同社の取締役であったもの、同2の被告は昭和五九年八月一〇日の鹿島商事設立時から昭和六〇年八月ころの同社倒産時まで同社の監査役であったもの、同3ないし7の被告らは同社の営業担当従業員であったものである。

2  (違法行為)

(一) 鹿島商事のゴルフクラブ会員証券商法は、同社の販売する株式会社豊田ゴルフクラブ(以下、「豊田ゴルフ」という。)発行のクラブ会員証券が会員に対する預託金制度に基づくものではなく売り切りであることから、会員証券自体の資産価値は利用権の価値の有無によって定まるところ、実際には、豊田ゴルフ傘下の三〇コースのゴルフ場の実態は、営業中のものが海外及び僻地に数コース存在するにすぎず、その他は計画中又は造成中で、営業予定のゴルフ場も経営困難な状況にあって、資産価値を有するゴルフ場を有していないなど、右ゴルフ会員権にはその販売価格に見合うだけの価値が存在しないばかりか、将来値上がりする見込みのないものであり、また、右ゴルフ会員権を会員が別途締結する「オーナーズ契約」に基づき他に賃貸することによって年一二パーセントの賃料を収受できるという見込みもないばかりか、その元金返済の可能性も換金性(市場流通性)も存在しないことが明らかであって、この商法が早晩破綻し顧客に損害を与える結果となることが予期されたにもかかわらず、右ゴルフクラブ会員権が換金性があり、将来値上がりが確実で、これを会社に預けておけば会社がこれを第三者に有利に賃貸して年一二パーセントの賃借料を支払うので有利な利殖手段であるとし、顧客に対し、豊田ゴルフ傘下の総てのゴルフ場を利用し得る共通会員証券の「譲受」と、これを豊田ゴルフが一〇年間借り受け、毎年一二パーセントの賃借料を前払いする「オーナーズ契約」の締結を同時にさせて、ゴルフクラブ会員権売買代金名下に金員を取得して、騙取する、というものである。

また、鹿島商事は、ゴルフクラブ会員権の売買とその賃貸借という形式を仮装していたが、その実態は、不特定多数人から業として預り金をしていたものであり、右行為は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律二条一項の規定に違反するものである。

(二) 被告番号1の被告は鹿島商事の元取締役、同2の被告は同社の元監査役であり、少なくともその在職期間中、前項の鹿島商事の違法行為を企画・立案・推進してきたものであり、鹿島商事の前記ゴルフクラブ会員証券商法の欺瞞性と勧誘行為の実態を知り、または容易に知り得べきものであったにもかかわらず、別紙認容債権一覧表(以下「別紙一覧表」という。)の被告欄記載の被告番号1および2に対応する同表の原告欄記載の原告らに対し、別紙原告別被害経過書および同整理表(以下一括して「別紙経過書等」という。)記載のとおり、部下である営業担当者を指揮・監督・助勢してこれを行わせた。

(三) また、被告番号3ないし7の被告らは、別紙整理表の不法行為時期欄記載のころ、同表の所属欄記載の支店に所属し、同表の役職欄記載のとおりの同社営業部における地位を有していたものであるが、鹿島商事の前記ゴルフクラブ会員証券商法の違法性を知り、または容易に知り得べきものであったにもかかわらず、別紙一覧表の被告欄記載の被告番号に対応する同表の原告欄記載の各原告らに対し、別紙経過書等記載のとおり、自らまたは右各支店所属の自己の部下等をして、豊田ゴルフクラブ会員証券を、豊田商事が考案したマニュアル手順に基づいて、電話係が無差別に電話をかけたうえ、一方的に訪問し、商取引上の常識を越える長時間にわたり、強引かつ執拗に勧誘し、右勧誘に当たっては、ゴルフクラブ会員権の価格が種々複雑な要因によって決定され、その換金方法等の制度が整備されていないのに、右の点について無知、無経験な顧客に対し「絶対に損しない。儲かる。」等の断定的利益表示をし、契約の主な対象となった老人に対し、翻意しないように他人に対する口止めをしたり、預・貯金の払戻しに同行したり、その手続きを代行したりするなど社会的相当性を逸脱した形での勧誘行為をし、右原告らをして、豊田ゴルフクラブ会員権の売買契約および前記オーナーズ契約を締結させ、右原告らから別紙一覧表の交付金額欄記載の金員の交付を受けて、これを騙取した。

3  (責任)

(一) 被告番号1の被告は同社の取締役として、同2の被告は同社の監査役として、同社の違法行為を企画・立案・推進してきたものであり、鹿島商事の前記ゴルフクラブ会員証券商法の欺瞞性と勧誘行為の実態を知り、又は容易に知り得べきものであったにもかかわらず、右のとおり、部下の営業社員を指揮・監督・助勢して、これを行わせたものであって、民法七〇九条、七一九条による不法行為責任を負うものである。

(二) 被告番号3ないし7の被告らは、同社の営業担当従業員であったものであるが、鹿島商事の前記ゴルフクラブ会員証券商法の違法性を知り、又は容易に知り得べきものであったにもかかわらず、右のとおり、自ら、原告らに対し違法な勧誘行為をし、または、自己の部下をしてこれを行わせ、原告らとの間で前記契約を締結させて金員の交付を受けていたものであり、民法七〇九条、七一九条による不法行為責任を負うものである。

4  (損害)

(一) 原告らは、右のような被告らの詐欺商法により、別紙整理表の交付金額欄記載のとおり金員を騙取されて、同額の損害を被った。

(二) 原告らは、原告ら訴訟代理人らに本件損害賠償請求手続を依頼し、その弁護士費用として、別紙一覧表の弁護士費用欄記載の全額を支払う旨約した。

5  よって、別紙一覧表の原告欄記載の原告らは、同表の被告欄記載の被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償請求として、同表交付金額欄及び同表弁護士費用欄記載の各金額の合計額である同表損害額欄記載の金額のうち、同表認容額欄記載の金額及びこれに対する本件不法行為の日の後である昭和六〇年七月一日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

第三証拠〈省略〉

第四当裁判所の判断

一〈証拠〉並びに弁論の全趣旨を総合すれば、請求原因1及び2の各事実がすべて認められる。

右事実によれば、被告らは、原告らに対し、請求原因3記載の各責任があることをそれぞれ認めることができる。

以上によれば、原告らには、それぞれ、別紙一覧表の交付金額欄記載の金額と同額の損害が生じたものといえる。

また、弁論の全趣旨によれば、原告らが、原告ら訴訟代理人に対し、本件損害賠償請求訴訟手続の追行を委任し、その弁護士費用として、別紙一覧表の交付金額欄記載の金額の約一割に相当する同表の弁護士費用欄記載の金額を支払う旨を約したことが認められ、そして右は、いずれも本件事案の難易、審理経過、本訴認容額等に照らし、本件不法行為と相当因果関係に立つ損害と認めるのが相当である。

そうすると、原告らは、別紙一覧表の交付金額欄及び同表弁護士費用欄記載の各金額の合計額である同表損害額欄記載の金額の損害を被っていることが認められる。

二(結論)

以上の次第で、原告らの本訴請求はいずれも理由がある。

(裁判官片野悟好 裁判長裁判官満田忠彦は転官のため、裁判官松村徹は転補のため、それぞれ署名押印することができない。裁判官片野悟好)

別紙〈省略〉

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